当サイト「みんなの自然エネルギー」は、自然の力を利用した枯渇することのないエネルギーについての解説をしているサイトです。

自然エネルギー(再生可能エネルギー)を利用した様々な発電方法をご紹介しているほか、次世代エネルギーパークと呼ばれる自然エネルギー学習施設の見学レポートなどを公開しております。

自然エネルギーの種類

国が政策として固定価格買取制度を導入した理由は「自然エネルギー(再生可能エネルギー)の普及促進」ですが、まずは具体的にどんなエネルギーが再生可能なのか、その種類を簡単にご紹介します。

太陽光発電 太陽の光が持っている力を利用して、電気を生み出します。太陽光発電は、私たち一般消費者にとって最も身近に感じられる自然エネルギーでしょう。補助金制度や省エネへの意識の高まりなどもあり、ソーラーパネルを屋根に設置している家も増えてきました。
風力発電 風という自然の力を利用して、電気を生み出します。実際にでも、テレビや映画などででも、白くて大きな風車がくるくると回っている景色を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。その風車は電力を生み出す風力発電の設備です。
地熱発電 地下深くに存在している地熱の力を利用して、電気を生み出します。大規模な設備が必要となり、事前調査から発電所の稼働まで長い時間を要するため、まだあまり一般的とは言えません。ただ、日本列島には地熱が豊富に存在しているため、日本は地熱発電に適している国と言えます。
バイオマス発電 バイオマスを燃やして発生する熱を利用して、電気を生み出します。バイオマスとは、動植物から生まれた生物資源(生物体)のことです。生ゴミ・食品廃材・建築廃材・家畜糞尿・林地残材・セルロースなどが該当します。地球温暖化対策や資源の有効活用などといったメリットがあります。
水力発電 水が流れる力を利用して、電気を生み出します。昔から大きなダムを使った発電所が稼働していて、かつては水力発電が最も大きな電力を生み出していたという時期もあります。最近では、河川や水路の流れを利用した中小規模水力発電と呼ばれるタイプに注目が集まっています。
その他 代表的な自然エネルギーは上の5種類ですが、他に「太陽熱・雪氷熱・温度差熱・地中熱」なども研究開発が進められています。いずれもまだメジャーな存在ではありませんが、新しい可能性を秘めています。

日本の発電方法の割合

日本では様々な発電方法が採用されていますが、割合が多い順にご紹介します。火力発電と原子力発電以外は全て自然エネルギー(再生可能エネルギー)です。

火力発電:78%

昔から日本の電力需要を担っている発電方法です。何十年も前から日本の主力の発電方法として、全国各地に発電所が設けられています。

2011年の福島原発事故以降、原子力発電による発電量が急減したことから、その代替として火力発電による発電が急増しました。また、日本のみならず、世界的に見ても最も多くの発電量を誇っています。

その名前の通り、火の力を使って発電します。ボイラーで燃料を燃やして、その熱を利用します。燃やす燃料も昔は石炭が主流でしたが、現在ではLNG(天然ガス)や石油なども使用されています。

現在も発電効率を上げるための研究や、二酸化炭素排出量を下げるための研究が続けられています。

水力発電:8%

火力発電と同様、古くから活用されている発電方式です。以前は原子力発電の方が発電量が多かったのですが、2011年以降は水力発電が2位となっています。

ただ、新たな発電所(ダム)を新設するのが難しいため、数十年前から発電量はそれほど変わっていません。日本全体の発電量に対する割合は8%ほどです。火力の約10分の1となります。

太陽光発電:6.5%

ソーラーパネルを使用することからソーラー発電とも呼ばれることがあります。家庭用ではない大規模発電になると「メガソーラー」とも呼ばれます。

一般の住宅に設置することができるうえ、二酸化炭素を排出しない非常にクリーンな発電方法であることから、国が設置に補助金を出しているほか、地方自治体でも優待や特典が用意されていることがあります。

サイズや規模などの条件によって左右されますが、ソーラーパネルの設置にはだいたい150万~300万円程度かかります。また、自宅で使わなかった分の電力を電力会社に売却できる売電という仕組みがあるのも特徴です。

原子力発電:5%

非常に膨大なエネルギーを生み出すことができることから、かつては火力発電に次ぐ発電量を誇っていましたが、2011年の福島原発事故を発端として、2015年までは1%未満にまで落ち込んでいました。

その後、再稼働を始める原子力発電所が出始め、現在は5%ほどを占めるまでに回復しています。

チェルノブイリや福島の大きな事故が引き金となって、日本のみならず世界中でその存在の意義を問われていますが、アジアを中心に現在も新たな原子力発電所は次々と建設されています。

バイオマス発電:2%

火力発電と同様の仕組みを利用するものの、バイオマスと呼ばれる生物由来の有機資源を燃料として発電を行うという方法です。カーボンニュートラルという性質を持っていて、燃料として燃やしても大気中の二酸化炭素を増やさないとされています。

また、単純に地球温暖化対策としての魅力があるというだけではなく、これまでゴミとして処分されていた様々な廃棄物を燃料とすることができるため、資源の有効活用という点でも注目を集めています。

風力発電:1%未満

風を受けて発電機(風車)を回す発電方法です。自然エネルギーの中でも伸びてきている発電方法で、特に中国やアメリカでは発電量も莫大となっています。また、中国やアメリカほど多くはありませんが、ヨーロッパでも人気があります。

日本では主に北海道に多くの風力発電所があるほか、茨城県や静岡県や鹿児島県などでも複数の風力発電所が稼働中です。

地熱発電:1%未満

次世代のエネルギーとして高い注目を集めているのが地熱発電です。地球の内部には非常に高温の地熱があることで知られていますが、その熱を利用して水蒸気を生み出し、その水蒸気のパワーでタービンを回します。

多くの発電量を誇っている火力発電には温室効果ガスの問題が、原子力発電には安全性の問題が、それぞれありますが、こちらは二酸化炭素の排出量が少なく、そして安全性も高い方法となっていて、これからの普及が期待されています。

サイト名の由来

当サイトの「みんなの自然エネルギー」という名称についてですが、こちらは「できるだけ多くの方に自然エネルギーへの関心を持って頂きたい」という当サイト運営チームの考えに由来しております。

また、サイトURLになっている「ore30」は次の2つの意味を持っています。

  • Our Renewable Energy(私たちの自然エネルギー)
  • 2030年までに自然エネルギーによる発電シェア30%を目指す

なお、「再生可能エネルギー」や「クリーンエネルギー」や「エコエネルギー」などといった同類の表記もございますが、当サイトでは混乱を防ぐため、一部の項目を除いて「自然エネルギー」の表記で統一しております。

みんなの自然エネルギー開設のきっかけ

もともとエネルギー分野に関心を持っていたのですが、2012年9月6日に開催された「自然エネルギー財団 国際シンポジウム 2030年とその先の未来へ」への参加が大きなきっかけです。

そちらで「2030年までに自然エネルギーによる発電シェア30%に」といった内容を初めて知り、弊社のような小さな会社でも何か協力できることや役に立てることはないかと考え、みんなの自然エネルギーを開設することにしました。

朝の9時30分から始まって夕方17時過ぎに終わったこちらのシンポジウムですが、最初の基調講演から最後の座談会まで、非常に密度の濃い内容で勉強になりました。

以下、シンポジウムのレポートとなります。主催者である自然エネルギー財団によって動画と資料がアップロードされていますので、実際の講演の様子を知りたいという方は、動画と資料もご覧になってみてください。

自然エネルギーに興味のある方はもちろんですが、興味がないという方でも楽しめる内容となっていたと思います。

ディスカッション1,2,3は専門的な内容になっているため難しいと感じられるかもしれませんが、まずは基調講演と座談会だけでも、ぜひ動画を見て頂ければと思います。

会場について

今回のシンポジウムはイイノホールで行われました。虎ノ門駅・内幸町駅・霞ヶ関駅と3つの最寄り駅があり、アクセスは良好です。私は内幸町駅を利用したのですが、地下通路があったため、外に出ることなく便利に移動することができました。

ホールは4階にあり、座席数はそれほど多いというわけではありませんでしたが、少し早めに到着したということもあって、前方中央部の席に座ることができました。ちなみにホールホワイエからは日比谷公園を眺めることができます。

ビル1階にあった案内板です。
2030年とその先の未来への看板

4階のホール入り口で受付を済まし、参加証を頂きました。
シンポジウム参加証

講演について

講演は全部で5つのパートから構成されていました。「開会挨拶・基調講演」「ディスカッション1」「ディスカッション2」「ディスカッション3」「座談会」の5つです。なお、以下に登場する方々の肩書きは2012年当時のものとなります。

開会挨拶・基調講演

シンポジウムは自然エネルギー財団理事長のトーマス・コーベリエル氏の挨拶から始まりました。挨拶は短めで、今回のシンポジウムの概要について触れています。

なお、動画では既に日本語の通訳が入っていますが、当日は同時通訳用のイヤホンが参加者に配られました。

続いて登壇されたのが会長の孫正義氏です。

今後の日本のエネルギー戦略を考えていくうえで、原発による発電シェアを0%にする場合でも15%にする場合でも、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の発電シェアを30%以上まで成長させる必要があるということを最初に述べられていました。

そして、原子力発電を止めて自然エネルギーに力を入れた場合に、各家庭にかかる電気代はどうなるのかという内容に移っていきますが、実は電気代に大きな差は出ないということが判明します。

また、電気代を抑えるために発送電分離が欠かせない理由が最後の方で解説されます。

孫正義氏の挨拶が終わり、予定では国家戦略担当大臣の古川元久氏によるプレゼンテーションが次に来るはずでしたが、鳩山由紀夫元首相が飛び入りで参加なさったため、孫氏に促される形で急遽登壇して挨拶をされていました。

個人的には、すぐ目の前で元首相の挨拶を聞くのは初めてのことでしたので、貴重な体験にもなりました。

続いて、国家戦略担当大臣の古川元久氏が登壇されます。「グリーン・エネルギー革命の実現に向けて」というタイトルで、1990年代のIT革命との比較を行いながら、分かりやすい解説をされていました。

最後は、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長の新原浩朗氏による講演です。

「自然エネルギーの可能性と新たな日本のモデル」というタイトルで、自然エネルギーだけではなく、蓄電池やスマートハウスに関する内容も扱われていました。野球に例えたユニークな解説も面白くて分かりやすかったです。

ディスカッション1

休憩を挟んでディスカッション1が始まります。タイトルは「世界的な自然エネルギーの大躍進」です。

こちらのコーナーでは、まず最初にドイツ・デンマーク・中国のエネルギー事情や今後の政策目標などが各プレゼンターから発表され、そしてディスカッションが行われました。

駐日ドイツ大使館 環境担当参事官のクリスティーネ・ワシレフ氏、デンマークエネルギー庁国際部チーフアドバイザーのラルス・ゲオルグ・ヤンセン氏、中国再生可能エネルギー産業協会事務局長のリー・ジュンファン氏、そしてモデレーターとして自然エネルギー財団ディレクターの大林ミカ氏が登壇されました。

各国の詳しいエネルギー事情については、動画や資料をご覧頂ければと思いますが、各国とも自然エネルギーの中では風力発電・バイオマス発電・太陽光発電が主力となっているとのことでした。

ただ、あまり地熱発電には触れられていなかったため、質疑応答のコーナーで直接質問させて頂きました。01:03:25あたりから質問しているのが私です。

やはり地熱の量という点がネックになっていて、それほど積極的に取り組んではいないようでした。地熱発電の分野は日本が先頭に立って技術革新を進めていくしかなさそうです。

ディスカッション2

ディスカッション2のタイトルは「アジアの自然エネルギーシナリオと国際連系」です。

こちらの動画はないのか?と思われるかもしれませんが、先のディスカッション1のところでご紹介している動画の後半部分(01:16:40あたり~)がディスカッション2となっています。

引き続き、海外のエネルギー事情に関連した内容となりますが、こちらはタイトルの通り、特にアジアに注力しています。日本を含めたアジアの複数国間でのスーパーグリッドの構想なども飛び出してきます。

モンゴル国立再生可能エネルギーセンター所長のオスゴンバータル・ジャンバルジャムツ氏、ロシアエネルギー庁国際協力部長のオリガ・ウラセビッチ氏、韓国エネルギー管理公団KEMCO会長のハー・ジェンスー氏、そしてモデレーターとして開会の挨拶をされたのトーマス・コーベリエル氏が登壇されました。

こちらも詳しくは動画と資料をご覧頂ければと思いますが、個人的にはモンゴルにかなりのポテンシャルがあるという点が興味深かったです。

大規模ではないものの、日本と同様に地熱発電も行えるという点や、風力発電と水力発電と太陽光発電の実用化も大きな可能性を秘めているとのことでした。

ディスカッション3

ディスカッション2が終わってから昼休憩がありました。シンポジウムとは関係ありませんが、同じビルの地下に広がっているレストランフロアで蕎麦を食べました。

そして、ディスカッション3へ。今度のタイトルは「電力市場の未来像 - 発送電分離や自然エネルギー市場の統合のあり方」です。

富士通総研 主任研究員の高橋洋氏、ドイツ・エコ研究所 エネルギー・気候政策コーディネーターのフェリックス・マテス氏、本日3度目の登場となるトーマス・コーベリエル氏、そしてモデレーターとして環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也氏が登壇されました。

今回は、主に発送電分離と電力自由化についてのプレゼンテーションとディスカッションが行われました。

ドイツとスウェーデンがどのように電力自由化を成功させたのか、そして、東京電力や関西電力など各地方の電力会社がほぼ地域独占的な状態になってしまっている日本はどうするべきなのか、といった内容となっています。

個人的に興味を惹かれたのは、高橋洋氏が提言されていた「大規模集中型から自立分散型に移行するべき」という点です。

開会挨拶・基調講演にて新原浩朗氏も取り上げていたCEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)やスマートグリッドが、将来的に広く日本全体に普及していくのではないでしょうか。

座談会

最後のセクションは座談会です。自然エネルギー財団副理事長の末吉竹二郎氏をモデレーターとして、会長の孫正義氏と東京都副知事の猪瀬直樹氏による座談会が開かれました。こちらのタイトルは「今こそ 電力市場に適切な競争を!」です。

最初に猪瀬氏のプレゼンテーションが行われ、序盤で東京電力病院がやり玉に挙がりました。(※その後、2014年2月に閉鎖され、東京建物へ売却されました)。その他にも東京電力の様々な施設やおかしな点などを指摘していました。

座談会は、孫氏と猪瀬氏の興味深い話し合いが続き、1時間以上も続いていたとは思えないほど時間が早く感じました。それだけ内容が面白かったのです。時間があまりないという方でも、ぜひこの座談会だけは見て頂きたいと思います。

また、座談会の中で特に惹かれたのが、猪瀬氏の「廃炉の先進国になる」という発言です。

原子力発電についてはメディアでも様々な意見が挙げられていますが、「廃炉の先進国になって廃炉の技術を輸出する」という考え方を自分は持っていなかったため、とても新鮮で、なるほどと思わされました。