スマートグリッドの特徴とメリットデメリット

更新日:2018年12月7日

次世代型の電力網として世界中で実証研究が続けられているスマートグリッドの解説をしています。スマートグリッドは英語ではsmart grid(賢い電力網)と表記されていて、エネルギー管理の最適化に向けた新しいシステムと言えます。

日本だけではなくアメリカやヨーロッパの国々など、世界中で多くの国が官民一体となってスマートグリッドの研究開発を進めていますが、これまでの電力網と比較して何がそんなに優れているのでしょうか?

目次

  1. 特徴・仕組み
  2. スマートシティを構成する主な施設
  3. メリットデメリット
  4. 実証研究の結果

特徴・仕組み

スマートグリッドの概念図
(イラスト出典:経済産業省 資源エネルギー庁

こちらがスマートグリッドの概念図です。イラスト左上のコントロールセンターに地域の発電所や建造物や一般住宅などのエネルギー情報が集約されるという仕組みです。

このシステムのことをCEMS(Community Energy Management System)と言い、CEMSが導入されている地域のことをスマートシティと言います。そして、その地域の電力ネットワークのことをスマートグリッドと言うのです。

なお、イラストの出典である経済産業省のホームページでは「スマートコミュニティ」という表現をしていますが、こちらはスマートシティと同じ意味の言葉です。

また、一般会話や講演やセミナーなどにおいては、スマートグリッドも含めて同じ意味として扱われることも少なくありません。

スマートシティを構成する主な施設

スマートシティの仕組みNo2
(イラスト出典:経済産業省

戸建てや集合住宅などといった各家庭にHEMSを(スマートハウス)、ビルやホテルなどといった商業施設にBEMSを(スマートビルディング)、そして工場にFEMSを導入し(スマート工場)、これらの各施設にスマートメーターも導入します。

実はスマートグリッドを構築するためには、このスマートメーターも必要不可欠です。エネルギー使用量を始めとしたデータの送受信を行えるほか、新たなサービスの提供も可能とされています。

スマートメーターを導入することでCEMSの機能を果たすことができるようになり、地域全体のエネルギー最適化が可能となるという仕組みです。

また、スマートハウスやスマートビルのようにエネルギー最適化だけでは終わりません。交通インフラやIT基盤などを最適化することでその地に住む人々の生活の質の向上を目指します。

なお、上のイラストに登場するエネルギー関連の専門用語に関しては、以下の各ページで解説を行っておりますので、併せてお読み頂ければと思います。

メリットデメリット

既存の都市をスマートシティにすることのメリットはたくさんありますが、やはり地域全体でエネルギーの管理を行えるという点が最大のメリットでしょう。

デマンドレスポンスによる需給の調整が可能であるほか、太陽光発電や燃料電池などの分散型電源を導入することで、地域的な停電を防ぐことも可能となります。

デメリットと言えるような点はないのですが、これからの課題や問題点はあります。それは「時間」と「コスト」です。全ての建物にHEMSやスマートメーター等を導入するには長い時間と大きなコストが必要となります。

他のエネルギー関連設備やシステムに関しても同様のことが言え、実現へのハードルは低くはありません。

実証研究の結果

2009年に経済産業省が「次世代エネルギー・社会システム協議会」を設置し、そこで実証研究のエリアを公募しました。公募には全部で20の都市が参加し、その中から選ばれたのが次の4都市です。

いずれの都市も人口や経済規模の大きな大都市となっていて、次世代型のエネルギーや社会インフラの実証研究を行いました。なお、4都市とも無事に実証研究は終了し、いずれも研究における結果報告書が公開されています。

神奈川県横浜市

みなとみらいや中華街などがある日本屈指の観光都市としても知られている横浜では「横浜スマートシティプロジェクト」というプロジェクトが行われました。

観光名所・住宅街・オフィスビル・ホテル・工場などといったように、建物の多様性に富んでいる大都市横浜での実証研究で、4,000を超える戸数にHEMSが導入されました。

BEMSやFEMSも導入されているほか、大規模ビルに関してはデマンドレスポンスの運用も行われました。蓄電池を一元管理するネットワーク「蓄電池SCADA」への取り組みも行われました

プロジェクト名 横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)
研究実施都市 神奈川県横浜市
対象区域 みなとみらい21エリア・港北ニュータウンエリア・横浜グリーンバレーエリア
対象世帯 集合住宅:40戸
マンション:1棟(177戸)
実証用建築物:4,083戸
対象事業所 7棟
EV/PHV台数 50台
導入目標 HEMS:4000戸
太陽光発電:2,700kW
電気自動車:2,000台
参加団体 横浜市・横浜スマートコミュニティ・東京工業大学・UR都市機構
参加企業 東京ガス・東京電力・三菱地所・野村不動産・三井不動産・積水ハウス・ミサワホーム・NEC・東芝・NTTファシリティーズほか
公式ホームページ こちら

愛知県豊田市

愛知県内で最も面積の大きな市であると同時に、世界トップクラスの自動車メーカーであるトヨタ自動車の本社がある市でもあります。

そんな豊田市では「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト」が行われ、200世帯以上が実証研究に協力しました。

太陽光やバイオマスなどといった再生可能エネルギーへの取り組みのほか、交通や自動車関連への取り組みが目立ちました。

トヨタ自動車の本社がある影響かもしれませんが、燃料電池車やプラグインハイブリッドカーなどといった自動車関連と、高速道路交通システム(ITS)に関する研究が盛んであるように感じます。

プロジェクト名 豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト(Smart Melit)
研究実施都市 愛知県豊田市
対象区域 豊田市・東山地区・高橋地区
対象世帯 227世帯
対象事業所 4事業所
導入目標 再生可能エネルギー導入比率61.2%
次世代自動車4000台
参加団体 愛知県・豊田市・名古屋大学・豊田商工会議所
参加企業 トヨタ自動車・中部電力・名古屋鉄道・中日本高速道路・日立製作所・富士通・シャープ・東芝・デンソー・ヤマハ発動機ほか
公式ホームページ こちら

けいはんな学研都市

けいはんなとは大阪と京都と奈良の二府三県にまたがっているエリアのことで、正式には関西文化学術研究都市と言います。そのエリアの中でも京都府内にあたる一部地域にて、スマートシティの実証研究プロジェクトが行われました。

けいはんなには様々な研究機関や学術機関が集まっているということもあり、電気自動車やCEMSなどといった技術力を必要とする設備も導入されています。

また、こちらのスマートシティに関するプロジェクトだけではなく、エコ住宅や生物多様性保全計画などといった多数の他のプロジェクトも行われています。

プロジェクト名 けいはんなエコシティ 次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト
研究実施都市 関西文化学術研究都市(通称:けいはんな学研都市)
対象区域 精華・西木津地区
対象世帯 HEMS導入世帯数:約110世帯
デマンドレスポンス対応世帯数:約700世帯
対象事業所 BEMS導入事業所:1棟
EV/PHV台数 60台
参加団体 京都府・木津川市・京田辺市・精華町・関西経済連合会・関西文化学術研究都市推進機構・UR都市機構ほか
参加企業 大阪ガス・関西電力・シャープ・三菱商事・三菱自動車・日本ユニシス・富士電機・古河電工・ルネサスエレクトロニクスほか
最終報告書 こちら

福岡県北九州市

政令指定都市にもなっている日本を代表する大都市の北九州市では「北九州スマートコミュニティ創造事業」というプロジェクトが行われています。

太陽光や風力などといった発電設備はもちろんのこと、他の地域ではあまり採り入れられていない燃料電池やデマンドバスなどといった設備も採用されました。

プロジェクト名 北九州スマートコミュニティ創造事業
研究実施都市 福岡県北九州市
対象区域 八幡東区東田地区
対象世帯 225世帯
対象事業所 50事業所
導入量 蓄電池:約800kW
燃料電池:約110kW
太陽光発電:約400kW
スマートメーター:225台
参加団体 北九州産業技術保存継承センター・北九州産業学術推進機構・北九州市立大学・九州ヒューマンメディア創造センターほか
参加企業 オリックス・JX日鉱日石エネルギー・シャープ・デンソー・東芝・電源開発・トヨタ自動車・日産自動車・三菱重工業ほか
公式サイト こちら

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